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第5回 モノづくりの強さと市場価値が結合すれば、日本の 製造業は再生する

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株式会社ハーズ実験デザイン研究所 代表取締役/村田智明氏×
レクサー・リサーチ/中村昌弘イノベーション研究センター長 延岡健太郎氏 × レクサー・リサーチ/中村昌弘


村田さんは1959年生まれで、鳥取県境港市のご出身である。1982年に大阪市立大学工学部応用物理学科を卒業し、三洋電機デザインセンターに入社。86年にハーズ実験デザイン研究所を設立し、プロダクトを中心にグラフィック、CI(コーポレート・アイデンティティ)、インターフェイスなどのデザインを広く手がけている。「行為のデザイン」と呼ばれるユーザ心理行動分析メソッドに基づく商品デザイン開発の指導・実践に加え、「デザイン経営ストラテジー」や「デザイン資産価値概念」「感性ビジネス」など、デザインの果たす役割を広く捉えたシステムを提唱。元エンジニアの経験を活かし、大学や企業における先端技術のデザイン可視化のサポート、プロデュースも行っている。京都造形芸術大学では、大学院にSDI(ソーシャルデザインインスティテュート)を開講し領域を超えた横断的な社会問題解決型の仕組みを作り、モノづくりを通した地域創生を研究している。 2005年には、マイクロソフト「Xbox360」のコンソールデザインを手がけ、同年4月にミラノで開催された世界最大級の国際家具見本市「ミラノサローネ」で発表したコンソーシアム・デザイン・ブランド「METAPHYS(メタフィス)」が話題を呼び、企業分野を超えてデザインや思想、ブランドの共有を図る新しいビジネスモデルとして、多数のメディアでも取り上げられている。 デザインによる地域振興にも造詣が深く、各企業のコア・コンピタンスを活かしながら、地域としてのベクトルを揃える地域型企業コンソーシアムのプロデュース、デザインにも携わっている。14年5月には『ソーシャルデザインの教科書』(生産性出版)を上梓した。 こうした活動を通じて「モノづくり」から「価値づくり」を進めている村田さんの考え方には共感する部分が非常に大きい。今回は村田さんに、プロダクトデザインにおける価値創造について、さまざまな観点からお話を伺っていきたい。

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世界12社が競うデザインコンペに勝つ


中村 村田さんは2005年に発売されたマイクロソフトの家庭用ゲーム機『Xbox 360』のデザインを手がけられたと聞いています。どのような経緯でデザインに携わられたのかをお聞かせ下さい。

村田 03年1月頃にマイクロソフト社からメールが一通届いたのですが、よく見てみると、メールのタイトルが「デザイン依頼」になっていて、「一度お会いしたい」と書いてありました。お恥ずかしながら、私のところにそういうメールが来るとは思っていなかったので、非常に驚きました。当時同社がXbox事業所を置いていた代田橋(東京都杉並区)のオフィスにお邪魔したところ、アメリカ本社から来ていたXbox担当のジム・スチュアート氏とドン・コイナー氏から「デザインコンペに参加してほしい」と依頼されたのです。彼らは「世界から12社が参加するコンペで採用された人が『Xbox 360』のデザインを担当することになる」と言われました。「なぜ世界コンペにするのか」と聞いたところ『Xbox 360』はワールドワイド・モデルなので、さまざまな国の民族性や嗜好性を調査する目的もあり、誰のデザインがワールドワイドに通用するのかというシミュレーションも兼ねているとのことでした。

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中村 なるほど。

村田 そうこうするうちに、世界から選抜された12社のデザインが出揃い、最終的に2社に絞られ、幸いなことに当社にも採用通知が届きました。私はそれをとても喜しく思いましたが、マイクロソフト社からの通知は予想とは大きく異なるものでした。「これからがスタートです。今まであなたに提供していたハードディスクのサイズを始めとするスペックは、すべてダミーです」というのです。

中村 そうなんですか。

村田 しかも彼らは、(コンペの試作品を)盗撮したような写真をネット上にわざとリークしていました。それが一つのメディア戦略でもあり、われわれの力量を試すためのテストでもあったわけです。そこからセキュリティの高い環境で、本当のデザインが始まりました。

中村 実際にどんな仕事をされたのですか。

村田 高性能のグラフィックボードを搭載している『Xbox 360』からは、大量の熱が出るので、その熱をどう処理するかというサーマル・ソリューション(熱対策)が重要になります。そこでアメリカ・カリフォルニア州のサンノゼに行き、シンガポールに本社を置くEMS(電子機器受託製造サービス)企業の工場で、「ソリッドワークス」を使って熱解析などを行いながら、朝から侃々諤々の議論を行いました。大変な仕事でしたが、楽しかったですね。

中村 単なるプロダクトデザインではなく、「世界中の多様なカルチャーを背景にしたデザインとは何か」という部分から入ってきたのですから、(マイクロソフト社の世界コンペは)グローバル戦略だったわけですね。

村田 はい。最終的に残った当社ともう一社が同じスペックや情報を与えられ、競争しながらデザインを行いましたが、結局は双方の「いいところ取り」をした商品ができたような印象です。当社は(筐体の)エッジが立ったデザインを行いましたが、最終的にはRの大きな競争相手のデザインとフュージョン(融合)した形になりました。

中村 なるほど。

村田 (コンペで二社に絞られ)第二期の開発が始まったときに、担当者がジム・スチュアート氏からジョナサン・ヘイズ氏に替わったのですが、彼は非常に面白いことに、試作モデルを毎回家に持って帰り、朝も帰宅後もずっと眺めていました。すると、最初は良かった私のモデルがだんだん飽きてきて、競争相手のRの大きなデザインの方がよく見えてきたりするわけです。そういう試行錯誤の中で、彼は私の基本的なデザインは守りつつも、競争相手がデザインしたRの大きな形状をディティールに採用しましたが、私はその手法に驚きました。試作モデルをずっと見続け、飽きがこないかというところまでを見極めながらデザインを決定するというこだわりが、日本の企業には欠けているような気がします。とにかくスピード、スピード、スピードで、長く売れない商品を作ってしまいがちではないかと。

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