当社が企画・立案しました日経ビジネスイノベーションフォーラムが開催されました

去る2021年10月26日に、弊社が企画・立案しました日経ビジネスイノベーションフォーラム「サイバーフィジカル経営戦略~ヒトとデータの共創が描く持続可能な製造業とスマート社会の未来~」が開催されました。以下、シンポジウムの概要をご報告いたします。

サイバーフィジカル経営戦略 ~ヒトとデータの共創が描く持続可能な製造業とスマート社会の未来~

CPSでモノづくり革命

サイバー空間と物理空間の相互作用によって、全体最適や課題対応を実現する「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」への注目が高まっています。特に製造業では、日本が長年培ってきたモノづくりの力を今後も生かしていく上で、CPSの活用は極めて重要なテーマです。そこで、当社株式会社レクサー・リサーチは、日経ビジネスイノベーションフォーラム「サイバーフィジカル経営戦略」(主催:日本経済新聞社イベント・企画ユニット)を企画・立案いたしました。シンポジウムでは、CPSが社会実装される現状を紹介すると同時に、経営と現場をつなぐCPSの機能や役割などについて、専門家が議論しました。

BSテレ東「日経ニュース プラス9」メインキャスター

榎戸 教子 氏

 

キーノート・スピーチ

サイバーフィジカルの実践と持続可能社会 〜データモデル・ヒト・ AI ・シミュレーション〜

CPSはドイツ発のインダストリー4・0においても実装された形態として位置付けられおり、その意義と概念を考えた実践が競争力の源泉になります。経営と現場をCPSでつないで「攻めるレジリエンス経営」を実現するためには、時間、空間、組織を超えて連携し、革新的な価値を生み出すインターオペラビリティー(相互運用性)、オートノマス(自律的)、サステナビリティー(持続可能性)の実現が必要不可欠です。

 

レクサー・リサーチはサイバー、フィジカル、インテリジェントの3層の構造を持ち、シミュレーションAIにより全体をダイナミックに最適化するCPSを製造業へ展開しています。さらにはモノづくりの知見をベースにカーボンフットプリント管理技術を開発し、循環経済等の脱炭素社会やスマート社会へのCPS展開を進めています。経済性と環境意識、ヒトの成長を成り立たせる未来指向型の社会システムの実現が喫緊の課題であると考え、挑戦を続けています。

レクサー・リサーチ 代表取締役社長・CEO・工学博士

中村 昌弘

 

製造業の未来に向けて〜「ものづくり白書2021 」から ニューノーマルで生き残る

「2021年版ものづくり白書」は製造業のニューノーマル(新常態)での生き残りをテーマに、レジリエンス、グリーン、デジタルの3つを柱に現状や課題をまとめて解説されました。不確実性が高まる中で、企業はサプライチェーン全体を俯瞰(ふかん)し、多面的なリスク対応を通じたレジリエンスの強化が求められています。危機の状態に左右されない、事業を継続するオールハザード型の事業継続計画(BCP)策定も必要になります。

一方、環境変化への対応では組織内外の経営資源を再構成・再結合するダイナミック・ケイパビリティーが競争力の源泉となります。またDX推進には経営ビジョンによる方向付けや部門横断的な取り組みが必要であるといえます。

経済産業省 製造産業局ものづくり政策審議室長

伊奈 友子 氏

 

ドイツ発のインダストリー4.0 最新動向と日独連携管理シェルで成果を共有

フラウンホーファ研究所はドイツ最大の応用研究組織で、ドイツ全土に75の研究所、3万人が研究活動を行っています。シュツットガルトにあるIPAはその一つで、製造業の競争力強化支援が研究テーマです。

ドイツではインダストリー4・0の標準化記述言語として管理シェルの開発を進めています。ここでは、生産ネットワークの全ライフサイクルを網羅し、企業間の相互運用を通じて高度に統合されたバリューチェーンの構築が可能で、レクサー・リサーチの最適化シミュレーションとの連携も実現しています。

いま政府が資金を提供するクリーン水素供給プロジェクトには130のパートナーが参加し、フラウンホーファ研究所は管理シェルを活用した情報連携によるレファレンス工場の開発を担当しています。そして、ドイツでは標準化済みの管理シェルの概念を国際標準化する活動を始めています。

ドイツ・フラウンホーファ研究所IPA

生産技術デジタルツール・コンピテンシーセンター所長

ヨアヒム・ザイデルマン 氏

 

講演

経営層と製造現場をつなぐサイバーエンジニアリングチェーンの実現意思決定に必要な検証支援

サプライチェーンを変化させる上で、最も難しい領域はサプライチェーンとエンジニアリングチェーンの接点となる生産リソースの変化対応になります。限られた情報で、生産リソースの追加・移管・廃止・改善に関する意思決定を行う変革が必要になるためです。

そこではCPSによる意思決定支援が大きなカギとなります。

CPSでは検証テーマに応じたデータ収集とモデリングを行い、シミュレーションを行って、最適な答えを模索します。必要な評価指標を定義し、短期間に改善を繰り返すアジャイル的な対応により、意思決定につながるシミュレーションが可能になります。こうしたサイバーエンジニアリングチェーンを導入した企業では、現場と経営層がつながり、大きな成果を上げています。小さな範囲から始め、経営層と現場が共通の指標、データで意思決定することにより、構造変化への対応力が増していくと考えられます。

KPMGコンサルティング ディレクタ

黒木 真人 氏

 

パナソニックのモノづくりにおけるCPSの取り組み変化を先取りし、改善促進

パナソニックでは現在、2005年からスタートしたNextセル生産革新活動のDNA化と、その活動をベースとしたスマートマニュファクチャリングに取り組んでいます。ここでの狙いは、CPSで変化を先取りし、モノづくり競争力の持続的強化を加速させることにあります。スマートマニュファクチャリングでは顧客、設計、拠点間、製造現場とサイバー、サービスの5つをIoTでつなげ、QCDE(品質、コスト、納期、環境)の飛躍的改善を図ることができます。

CPSの事例として、工程を最適化する3Dファクトリーモデリング、AI活用した予兆保全の取り組み、組み立て工程での改善を加速する標準作業ナビ、可動率向上に向けたレトロフィットIoTなどがあります。またリアルタイム動線抽出システムを活用し、現場データと経営マネジメントをひも付ける取り組みもございます。パナソニックが得意とする現場改善力とデジタルとをかけ合わせ、モノづくり競争力を強化することで、経営成果につなげていけると考えております。

パナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部 モノづくり強化室 室長

遠近 祥史 氏

 

AI × Simulation が実現する製造業の未来機械学習の適用範囲拡大

製造業において、AIは調整、予測、判断の3つの機能に適用することができます。当社はファナックと協業し、調整向けには機械特性に合わせてパラメータを自動調整するAIサーボチューニング、予測向けではモーター駆動系部品の故障予兆を検知するAIサーボモニターを開発しました。判断向けでは自社で開発・販売する、外観検査ソフトウエアが既に多数の実ラインで稼働しております。

一般的に、機械学習は大量の教師データが必要で、学習時のデータ分布に結果が左右されるという課題があります。これを解決し適用範囲を広げるため、シミュレーションとAIを組み合わせる取り組みが始まっています。例えば、ENEOSと共同開発したソフトウエア「MATLANTIS」は新物質開発や材料探索を高速化することが可能です。多量の学習用データをシミュレーターでつくり、幅広い元素・構造に対応する汎用性を実現しています。

Preferred Networks 取締役 最高技術責任者

奥田 遼介 氏

 

パネル・ディスカッションヒトとデータが共創するモノづくり、スマート社会の未来創造の舞台・共創する人材重要

きづきアーキテクト 代表取締役・工学博士 長島 聡 氏

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授 白坂 成功 氏

KPMGコンサルティング 代表取締役社長 兼 CEO 宮原 正弘 氏

レクサー・リサーチ 代表取締役社長・ CEO・工学博士 中村 昌弘 氏

BSテレ東「日経ニュース プラス9」メインキャスター 榎戸 教子 氏

 

フォーラムの最後に行われたパネルディスカッションでは、人とデータが共創するモノづくりを通じたスマート社会構築に向け、本分野をリードするパネリストがプレゼン、榎戸氏の司会で議論が深められた。

 

まず長島氏が「モノづくりの未来(ヒトとモノづくり)」をテーマに、人に着目したプレゼンを行った。

「VUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代、経営者は現状の効率化ではなく、未来を能動的に創造する経営が不可欠」と話し始め、技術の低廉化が追い風となり、現場起点のデジタル化により、ものづくり企業の稼ぐ力の向上が可能となると語った。

こうした効率化にとどまらず、捻出できた時間やリソースを価値創出へと活用することが重要と説明した。そして、その鍵となるのが、「多用な価値を構想する人材と、組み合わせで価値を生む様々なアセットの能力やスキルを書き出す人材」と強調した。つまり、能力やスキルを集めてきて構想を提示し、化学反応を生じさせて、価値を創出する場をつくるということで、「シミュレーションはその流通や対話を促し、社会実装のスピードを加速する」と主張した。

 

当社代表の中村から能力やスキルの書き出し方法について聞かれると、長島氏は「例えば、製品やサービスを企画している人の創意工夫を促す表現で書き出すこと」と答え、ドイツが展開するインダストリー4・0については「標準化のつくり方はとても参考になる。日本もこうした武器を身に付けながら、新たな価値創出に取り組むことが大切」とコメントした。

 

続いて、白坂氏が「スマート社会の未来」をテーマにプレゼンを行った。いまデジタル技術の進化でCPSやデータ連携などの手段が増え、できることの範囲が広がり、新たな目的を達成できる機会が広がっている、さらに異分野や異業種の事象がつながる「System of Systems」により、「これまでの常識や前提が通用しない社会に向けた変化が加速されている」と指摘。その上で、スマート社会の構築に必要なことは「多様なプレーヤーによる多彩なサービスを実現する、つながるためのデータモデル」と強調した。そして、こうしたデジタルインフラと「全体を俯瞰しオーガナイズできる人材、多様性を生かせる人材、変化を見極められる人材が必要」と述べた。

 

長島氏からモノづくりの促進に必要なことを問われると、白坂氏は「つくり出すことそのものに価値があることを認識することだ」と答え、何かをつくり出すことの楽しさを教える教育の重要性を訴えた。

 

宮原氏は「企業経営の未来」をテーマに、CPS活用による変革のポイントと経営者の役割についてプレゼンを行った。宮原氏は経営者が過去の延長線上にないイノベーティブな意思決定を行うには、CPSを活用して「空間の壁、時間の壁、思い込みの壁という3つ壁を越えることが必要」と指摘。その上でモノづくりでは社内外のデータをCPSを使ってシミュレーションすることで可能性に気づき、「新たな機会の創出」「リスクとロスを低減したアクション」の2つが可能になると説明されました。こうしたチャンスとリスクマネジメントの双方向でCPSを活用できれば、「他社に依存しない自立した経営が可能になる」と語った。さらにサステナブルな成長を実現するための経営者の役割として「パーパス経営、テクノロジー活用、多様性、リスク対応」の4つを挙げた。

 

当社代表の中村からからCPS導入での経営と現場の連携、あるいは管理のポイントについて質問されると、宮原氏は「経営者は現場任せにしないこと。データであれば、何のデータが必要で、そこから生み出したい価値は何か、現場と目的を共有することだ。小さくてもいいので成功体験を積み重ねることも大切」と回答した。

当社代表の中村によるフォーラムの総括の後、榎戸氏が「本格的なデジタル社会に向けてCPSの果たすべき役割や人が進むべき道筋について、4人のパネリストから意義深い示唆が伺えた」とパネルを締めくくった。

 

総括価値創造へとつなぐ挑戦を

激動する、解のない時代だからこそ、俯瞰的な視点で何をどう変えればいいかを問う姿勢が必要です。その上で様々な組織活動をCPSで統合し、変化への対応力を養うことは欠かせません。ドイツではCPSの社会実装が進んでおり、日本でもデータモデルを活用したCPSが始まっています。

日本がモノづくりで培ってきた経験値は最強のコンテンツです。それをCPSを通じてどう活用していくかが、今後のポイントになります。今日の議論でも出てきた経済性、環境意識、ヒトの成長などを視野に入れて、製造からスマート社会までスケーラブルに展開していく、そうすることで、ヒトとデータの共創による持続可能な製造業とスマート社会の未来を描くことができるはずと考えております。CPS活用を価値創造へとつなぐ多様な挑戦が行われることを大いに期待しています。

我々は本フォーラムで議論いたしました視点に立ち、次世代をリードする技術開発や、事業革新のご支援を行っております。さらには、CPSを最大に活用して循環エコノミーや脱炭素社会の実現を目指すネットワーキング・コンソーシアム活動を計画しております。

 

もしご興味の点がございましたら、以下までお問い合わせください。差支えない範囲で情報交換させていただければ幸いです。

 

株式会社レクサー・リサーチ

代表取締役 中村昌弘(工学博士)

東京都中央区日本橋馬喰町1-5-12-10F

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