カーボンニュートラルをデザインする一環として、環境デカップリングを進めることは、これから採るべき手段のひとつです。如何に脱炭素を削減するエネルギーや装置を導入したとしても、それらを準備するためにCO2を排出していては、意味をなしません(グリーン・ウォッシュ)。環境デカップリングをすすめるためには、これまでシステム・デザインにおいて連携出来ていなかった「現場活動」と「環境対応」を設計段階での設計システムで予測的に評価し、これらの影響指標を直結することが重要なアプローチです。トレードオフの関係にある経済性と環境対応を「デカップリング」するようにデザインすることを進めていく。
次に、どの様な対応をおこなえば、環境デカップリングを進めることができるかという観点が重要です。
環境デカップリングを行うためには環境負荷を下げるための設備投資に対して、それに実行するコストを削減していくことが一つの考え方です。逆の方向として、現状の設備であったとしても、生産性を高めることで、現状の単位コスト当たりの環境負荷を下げていく方向も有力な考え方です。
後者は現状の設備、資源を有効に活用する方向であり、大掛かりな設備導入や動力源の変更を行うことなく、環境対応のハードルを下げる考え方ということになります。
この考え方は、従来の「リーン生産」、つまり、無駄を取って生産性を高める考え方の延長線上に位置するものですから、日本の産業文化と近いものです。ここでのポイントは、前項で記しましたように、カイゼンや生産性向上が「どれくらい」、環境負荷の低減に寄与するかを数値的に評価しておくことです。つまり、どのような打ち手が環境負荷と経済性、双方にとって有意義であるかを数値評価する機構が求められます。
*「リーン(lean)」とは「贅肉の取れた」という意味を表します。リーン生産方式はMITのジェームズ・P・ウォマック(英語版)、ダニエル・T・ジョーンズ(英語版)らがトヨタ生産方式や5S・改善などを研究し、整理・体系化の後、一般化したもので、生産管理手法の一手法です。